2018/07/29 01:32

古代ローマ人の本質を見抜き、

「パンとサーカス」に生きる人々と表現した詩人ユウェナリスでしたが、

この表現は当時見向きもされなかったでしょう。

なぜならローマやポンペイなどで発見された遺跡からは、

当時の人々の様々な落書きが見つかっており、

まさしくその内容は、衣食住満たされ、ゲーム(賭け事)に興じたり、

色恋に心ときめかせる思いがつづられているのですから、

「パンとサーカス」など当たり前のことだったのです。


ユウェナリスは「風刺詩集 (Satvrae) 」において、

「・・・国政に関する関心を失い、

かつて政治と軍事の全てにおいて権威の源泉であった民衆は、

今では一心不乱に。もっぱら二つのものだけを熱心に求めるようになっている。

すなわちパンと見世物を・・・」

と表現し、人々に警告しているのです。


「パンとサーカス」を「力の次元」として俯瞰的に眺め、警戒することができるということは、

その人の中に「慈愛の次元」「知性の次元」が機能しており、

バランスがとれていることを意味します。


バランスを欠いた個人、そして社会はじわじわと衰退していく。

これは、遠く離れた日本でも、

平家物語の中に、「盛者必衰の理をあらわす」と表現されるものであり、

心の本質をとらえた真理でありましょう。